Project.9
TOWN DEVELOPMENT
LEARNING IN KOYASAN 2022
高野山における“まちづくり学習”の実践 2022

Action research / 2022 / KOYASAN
2020年度より和歌山県高野町の町立中学校においてまちづくり学習を実践研究に取り組んでいる。研究テーマは「初等中等教育における“まちづくり学習”の実践が共創まちづくりに果たす役割の分析」で、実際の教育現場に身を置いたアクションリサーチに基づき、学際的なアプローチで研究を行っている。アクション部分では、高野山金剛峯寺を擁する和歌山県高野町の町立中学校にて、教員との協働で、中学校の3年間で学習することを想定した“まちづくり学習”の企画・実践に取り組んでいる。リサーチ部分では、まちづくり学習の企画及び実施の過程を分析するとともに、授業実施後の生徒へのアンケート調査と教員・地域住民への聞き取り調査により、各年度の学習プログラムとその実施方法について生徒の学びや地域住民の反応の比較から検討している。それにより、まちづくり学習の実施に向けたプログラムのあり方とその課題を整理した。

ふるさと学習の実施経緯
高野町は世界遺産を有し観光地として著名である一方で,近年人口減少が続く地方小都市である。そうしたなか,高野町唯一の中学校である高野山中学校では,郷土愛の定着を目的とした「ふるさと学習」が総合的な学習の時間に取り組まれてきた。2020年度よりこの「ふるさと学習」の一環としてまちづくり学習が導入された。初年度は,一年間で学習の成果を取りまとめプレゼンテーションまでを行う提案重視型のプログラムとして実施し,2021年度は学習過程において生徒と地域のステイクホルダーとの交流・協働という地域連携の機会を組み込み,中学校の3年間を通して継続的にまちづくり学習を行うことを想定した学年別段階方式のプログラムとして実施した。2022年度は,中学校の全学年が合同で複数のプロジェクトチームを作り,継続的にまちづくり活動に関わっていくことを想定した異学年協働プロジェクト方式のプログラムとして実施した。

ふるさと学習の企画内容
2022年度の「ふるさと学習」は,筆者らが「高野町の人・産業・空間を活かしたまちの未来を提案しよう」をテーマに設定し,生徒ら自身が設定した3つの小テーマに分かれ各々の視点から「高野山のまちをどうしていきたいか?」を議論するという内容として企画された。授業は,2021年度と同様に,ステップ1:探求テーマの検討(3時間),ステップ2:フィールドワーク(14時間),ステップ3:まちの未来構想(17時間),ステップ4:未来構想の中間発表・意見交換(4時間)の4つのステップに分けられ,計20回・38時間にわたって実施することが予定された。なお,ステップ2のワークは学年別で,ステップ1,3,4のワークは異学年協働で実施することとした。

Step1:マインドマップを書こう
生徒ら30名がマインドマップ作りに取り組んだのち,生徒らが考える高野山の魅力や課題をモニターで共有する手順を踏んだ。その上で,6組に分かれ,高野町の人・産業・空間を活かしたまちの未来を提案するための探求テーマを検討した。

Step2:まちの方々に学ぼう
地域住民が考える「高野山の魅力や課題」「未来に望むこと」を把握するため,生徒らが約100分間× 12回(内訳:全学合同1回/1年生5回/2年生4回/1年生2回)にわたりフィールドワークに取り組んだ。その内容は,ステップ1の各グループの探求テーマをもとに筆者が候補地を提案し,そこから教員と生徒らが選定した13ヶ所の対象地(金剛峯寺・大工「尾上組」・桧皮葺職人「桧皮葺古家」・和菓子屋「さざ波」・精進料理店「花菱」・角濱胡麻豆腐店・紙漉き職人「和紙の会」・紙漉き工芸「koubou2466(西室院)」・南海電鉄沿線価値創造課・ゲストハウス「kokuu」・高野町教育委員会・観光まちづくり組織「DMC高野山」)において,地域住民にインタビューを実施するものである。学年毎に調査を実施後,生徒らはインタビュー内容をまとめたA1のパネルを作成し,全学年で情報を共有している。

Step3:異学年交流チームで未来計画を考えよう
生徒らがまちの未来像を描くグループワークに取り組んだ。その内容は,生徒らが自由に設定した3テーマに分かれ,フィールドワークで収集した情報をもとに,高野町の人・産業・空間を活かしたまちづくりのアイディアを検討するものである。その際,生徒の要望に応じて地域住民から提案づくりの助言を受ける時間を設けた。

Step4:まちの方々と高野山の未来を語らおう
生徒らがプレゼンテーションの構成やシナリオを作成し,最終成果物をA1サイズの模造紙にまとめて金剛峯寺新別殿で地域住民らに発表した。未来構想の発表後には地域住民との意見交換の時間を約30分間設けた。なお,最終成果物は高野町観光情報センターにて約3ヶ月間展示した。
ふるさと学習の成果物
地域住民へのインタビュー調査などを通して伝統産業の継承のほか,観光客の動向や上手く使われていない歴史的空間資源の利活用に課題意識を持ち,3チームに別れて課題解決のためのアイディアをA1の模造紙と自由制作物(スケッチや模型,モックアップ,PPTスライド)にまとめた。ステップ1では,探求テーマを検討する過程で生徒らが「高野山の伝統産業の特徴と現状」「高野山ならではのまちづくりアイディアの企画方法」「まちづくり活動を推進する方法」の3点に関心を持ち,ステップ2において3視点を各学年が担当する形で地域住民へのインタビューを実施し,ステップ3にて,上手く使われていない歴史的空間(公園)を伝統産業を活かしたフードやグッズを購入できるまち歩きの拠点施設に再整備する提案や,ニッチな文化資産や伝統産業に触れてもらうためのまち歩きスタンプラリーを実施する提案を検討した。さらに,ステップ4の地域住民との意見交換を経て,次年度のふるさと学習において,地域住民との協働による伝統産業を活かしたフード開発・販売や,役場職員との協働によるニッチな文化資産や伝統産業に触れてもらうための謎解きマップ開発を実施する企画が生まれた。
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新潟大学大学院の講義で活動発表
