Project.22
PLACEMAKING AT SENRI NEWTOWN
「クミカグ」を使ったプレイスメイキング3〈団地再生編〉

Action Research / Toyonaka / 2025
本研究は、地域コミュニティと協働したプレイスメイキングの実践において、柔軟に組み替え可能なテンポラリーアーキテクチャー「クミカグ」を活用し、その効果を検証するものである。プレイスメイキングとは地域コミュニティを基盤に公共空間を再設計し、利用者にとって「居場所」と感じられる空間を創出する手法であり、仮設的な空間構築物との親和性が高い。テンポラリーアーキテクチャーは柔軟性が高く短期間での実験的空間活用が可能で、地域の特定ニーズに応じた対応ができる点が特徴である。しかし実践を通じ、その具体的な有効性や課題を検討することが求められる。そこで、建築計画研究室が開発した可変型仮設什器「クミカグ」を用い、4つの異なる地域で実施したプレイスメイキング事例を分析する。
クミカグは鋼製単管パイプと木板(合板)で構成された自作のモジュール什器であり、板に開けた丸穴に単管パイプを通しクランプで固定する構造とすることで高さやレイアウトを自由に調整できる。約20本の単管パイプと10枚程度の板材からなり、分解・運搬が容易で設置自由度が高い。完成された据え置きの設えではなく、使い手が試行錯誤しながら構成を変えられる“可変的な場づくりの道具”として設計されており、未利用空間の活用や場の育成プロセスに適した柔軟性を備える。

千里ニュータウンの団地再生社会実験における実践
大阪府豊中市に位置する千里ニュータウン北端のUR新千里北町団地C28号棟での取り組みである。同棟は長らく空きビルとなっていた元UR事務所だが、地域交流拠点の必要性から2024年4月に一部区画を活用したプレオープンスペース「トライぶらり」が設置された。さらに2025年9月、UR都市機構・豊中市・地域住民が協働する「キタマチラボ」へと建物全体がリニューアルされ、“みんなの実験室”として再生された。リニューアル記念として9月末から10月にかけて計9日間にわたり「Better Life Terrace ― 新しい暮らしを試すみんなのテラス」というオープニングフェスティバルが開催された。このイベントは千里NTの今後の暮らし方を地域と共に模索する場として位置づけられ、団地住民以外も含む誰もがマルシェやパーティ、ワークショップ等を通じて新しいライフスタイルを試行できる開かれた場となることを目指した。
プレイスメイキングの実践内容
Better Life Terrace開催期間中、研究室は団地内外の多様な活動を支援するための可変型仮設什器「クミカグ」を会場に設置した。単管パイプと木板を組み合わせたこの什器を用いて、小規模マルシェ形式の販売ブースを構築し、地元の5店舗による物販が行われた。




プレイスメイキングの効果/考察
千里ニュータウンの事例では、従来空きビルであった場所に多様な人々が集い交流する場を立ち上げるうえで、クミカグが重要な役割を果たした。出店者からは「自由にレイアウトできるので助かる」「空間に合わせて形を変えられるので一体感が出る」といった評価が聞かれ、会場デザインの柔軟性がイベント運営側・参加者双方に創造的な余地を与えていたことがわかる。千里NTは高度経済成長期に造成された大規模ニュータウンであり、現在高齢化やコミュニティの希薄化といった課題を抱えるが、本実践はそうした地域においても住民主体の新たな活動の場をサポートし得ることを示した。
