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Kindai Univ.

Architectural Planning Lab.

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Project.25

PLACEMAKING IN ISHIKIRI

「クミカグ」を使ったプレイスメイキング1〈商店街空き店舗活用編〉

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Action Research / Higashiosaka / 2024

本研究は、地域コミュニティと協働したプレイスメイキングの実践において、柔軟に組み替え可能なテンポラリーアーキテクチャー「クミカグ」を活用し、その効果を検証するものである。プレイスメイキングとは地域コミュニティを基盤に公共空間を再設計し、利用者にとって「居場所」と感じられる空間を創出する手法であり、仮設的な空間構築物との親和性が高い。テンポラリーアーキテクチャーは柔軟性が高く短期間での実験的空間活用が可能で、地域の特定ニーズに応じた対応ができる点が特徴である。しかし実践を通じ、その具体的な有効性や課題を検討することが求められる。そこで、建築計画研究室が開発した可変型仮設什器「クミカグ」を用い、4つの異なる地域で実施したプレイスメイキング事例を分析する。

クミカグは鋼製単管パイプと木板(合板)で構成された自作のモジュール什器であり、板に開けた丸穴に単管パイプを通しクランプで固定する構造とすることで高さやレイアウトを自由に調整できる。約20本の単管パイプと10枚程度の板材からなり、分解・運搬が容易で設置自由度が高い。完成された据え置きの設えではなく、使い手が試行錯誤しながら構成を変えられる“可変的な場づくりの道具”として設計されており、未利用空間の活用や場の育成プロセスに適した柔軟性を備える。

石切参道商店街における実践

大阪府東大阪市の石切参道商店街中腹に位置する古民家と空地からなるクリエイティブ拠点「ひらくきち」をフィールドとした。商店街は石切神社への参道として観光客も多く訪れるが、地元住民の憩いの場や回遊性向上が課題であった。

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パブリックスペース活用支援什器「クミカグ」の考案

研究室ではまず、地域住民と学生とのワークショップ(「近大生がこの地域で何ができるか?」)を実施して地域ニーズを探り、その結果を踏まえて学生が提案したパブリックスペース活用支援什器のアイデアから最優秀案を選定し、「クミカグ」を開発・製作した。

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什器コンペ資料

テンポラリーアーキテクチャー「クミカグ」の製作

シナ合板をCNC加工機で切削し、研磨・塗装のうえクリエイター(中野氏)の協力で組み立てを行った。完成したクミカグは幅約1.2~4.0m、奥行き0.6~3.0m、高さ0.7~1.1m程度に構成変更可能な可動家具である。

材質:鋼製単管パイプ(径48.6mm)、鋼製クランプ、木板(シナ合板)

構造:丸穴加工した板に単管パイプを通し、クランプで固定して組立

その他:約20本の単管パイプと10枚の板材で構成。分解・運搬が容易で設置自由度が高い。

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什器クミカグ
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プレイスメイキングの実践(1回目)

2024年10月と12月の2回、ひらくきち内にクミカグを設置しプレイスメイキングの社会実験を行った。1回目は板材とパイプを一体的に組み上げた「一体型」レイアウトとし、アート作品販売用の什器(展示台)など単一の大きな構造物として機能させた。2回目は板とパイプを分節化した複数の小さな構成要素に分離する「分離型」レイアウトとし、場に余白を持たせて空間内を回遊しやすい配置とした。両回とも学生と地域住民が協働で場の運営を行い、利用者の行動観察やヒアリングによる効果検証を実施した。

石切プレイスメイキング
石切プレイスメイキング2
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プレイスメイキングの実践(2回目)

2回目は板とパイプを分節化した複数の小さな構成要素に分離する「分離型」レイアウトとし、場に余白を持たせて空間内を回遊しやすい配置とした。両回とも学生と地域住民が協働で場の運営を行い、利用者の行動観察やヒアリングによる効果検証を実施した。

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プレイスメイキングの効果/考察

1回目(“一体型”)では来場者は主に什器周辺に滞留し、局所的な賑わいが生まれた。一方、2回目(“分離型”)では構成要素を空間全体に散りばめたことで商店街の通行人が各所で立ち止まり、空間全体の回遊性が向上した。特に地域住民や子育て世代が積極的に足を止め、滞在時間が増加する傾向が確認された。

アンケートでも「自由にふらっと立ち寄れる場になった」「子ども連れでも入りやすい」といった声が聞かれ、仮設構造物による心理的負担の軽減効果が示唆された。一方で「用途が分かりづらい部分は利用しにくい」という指摘もあり、ユーザーにとって直感的に使いやすいデザインや誘導策の必要性が課題として浮かび上がった。

本事例を通じて、クミカグのようなテンポラリーアーキテクチャーが公共空間に新たな可能性を拓き、地域住民の主体的な関与を促進する有効な手段であることが示された。同時に、より自由度と柔軟性のあるデザインの重要性や、使い手に利用方法を伝える工夫の必要性が確認された。

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