Project.1
Sustainable Railway Stations
持続可能な鉄道駅のあり方に関する研究

Japan / 2024-
近年、地方を中心に鉄道利用者の減少が進み、全国約9,400駅のうち半数近くが無人駅となっている。駅舎の空きスペースや老朽化が進む一方で、駅は依然として地域の「玄関口」や「記憶の風景」として重要な意味を持つ。
本研究は、無人駅を「負の遺産」としてではなく、新たな地域資源として再定義することを目的とし、駅を拠点とした多様な場づくりの可能性を探っている。研究は2024〜2026年度にかけて、近畿大学建築学部建築計画研究室とJR西日本コンサルタンツ株式会社の共同研究として進められており、全国的な事例分析と現地調査を通じて、無人駅を活かした地域再生のモデル構築を目指している。
■ 個人主体による無人駅を地域資源とした場づくりに関する考察(秋山・武部・浦井・鈴木)
全国102件の無人駅活用事例から、個人が主体となって運営する11駅を抽出し、現地調査とヒアリングを実施。カフェ、書店、宿泊施設など、各地で展開される小規模な活動を分析した。調査の結果、個人による駅活用は以下のような特徴を持つことが明らかになった。
①駅舎や風景の魅力が動機となる
海や山を望む景観、駅から見える風景が活用の出発点となる。
②駅舎のスケールが個人の創造活動に適している
改修や運営が容易で、個人の表現や地域交流の場として展開可能。
③ボトムアップ的な場づくり
地元住民や自治体との緩やかな協働関係のもとで、地域課題の解決や新しい公共空間の創出が進む。
こうした活動は、無人駅を「開かれた自己実現の場」かつ「地域との接点」として再定義する動きであり、駅を媒介とした小さなプレイスメイキングの萌芽を示している。
■ 自治体や鉄道会社主導による無人駅の活用実態の分析(浦井・武部・秋山・鈴木)
一方で、自治体や鉄道会社が主体となる事例も全国で増加している。本研究では、全国9駅(後閑・三見・日南・湯浅・卯之町・筑後吉井・南久留米・荒尾・鳩ノ巣)を対象に、文献およびヒアリング調査に基づき、活用の契機・目的・運営スキームを比較分析した。分析の結果、次のような構造的特徴が明らかになった。
①契機の違い
自治体主導は地域課題(防犯・移住促進など)をきっかけに、鉄道会社主導は自社資産の有効活用を目的に展開。
②活用目的の二類型
A.地域ニーズ対応型(小規模・単機能:自習室、移住体験住宅など)
B.玄関口整備型(大規模・複合:観光拠点、地域ブランド発信施設など)
③運営スキームの多様化
直営・委託・公募・PFIなど行政・企業・地域団体が協働して持続的な運営体制を構築。
以上の成果から、駅活用は単なる施設再利用ではなく、地域課題解決とまちづくりを結びつける協働プラットフォームとして機能しうることが示された。
■ まとめと展望
両研究を通して見えてきたのは、無人駅が地域の再生を促す「小さな公共圏」として再評価されている現状である。個人・自治体・鉄道会社という異なる主体が、それぞれの立場から駅を活用することで、地域に多層的な公共空間が生まれつつある。
今後の研究では、これらの事例を踏まえ、①無人駅を中心とした協働の設計手法、②駅舎・駅前空間を含む地域スケールでのプレイスメイキング、③利用者・事業者・行政の関係性を可視化する定量・定性モデルの構築を進め、持続可能な「駅まちづくり」のモデルを提示していく予定である。
秋山大樹・武部俊寛・浦井亮太郎・鈴木毅:個人主体による無人駅を地域資源とした場づくりに関する考察 持続可能な鉄道駅のあり方に関する研究その2
浦井亮太郎・武部俊寛・秋山大樹・鈴木毅:自治体や鉄道会社主導による無人駅の活用実態の分析 持続可能な鉄道駅のあり方に関する研究その3

ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社「さこすて®︎」について
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社の「さこすて®」は、駅を交通の場から地域の交流拠点へと再定義し、地域と共に持続可能な駅づくりを推進するプロジェクトです。具体的には、駅を活用したい人や企業と駅を結びつけ、共に持続可能な事業を創出し、調査や研究を通じてノウハウを構築しています。例えば、奈良県桜井市の三輪駅では、地域住民と協力して駅を地域の交流拠点として活性化させる取り組みが進められています。
無人駅活用事例

1. 個人主導型


